スポーツの「コーチ」とコーチングの「コーチ」の違いは?

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「コーチ」と聞いて、あなたはどんな人を思い浮かべるでしょうか。

グラウンドでホイッスルを鳴らしながら選手を指導するスポーツのコーチかもしれませんし、 仕事や人生のことをじっくり聴いてくれる、コーチングのコーチかもしれません。

同じ「コーチ」という呼び名でも、その関わり方やスタンスは、実は大きく違います。

その違いを知ることは、私たちが日々、周りの人とどう関わっていくかを考えるヒントにもなります。

スポーツのコーチとコーチングのコーチ

私たちの身の回りには、さまざまな「コーチ」がいます。
・スポーツの現場で選手を育てるコーチ
・ビジネスやキャリアの相談にのるコーチ

子どもたちと向き合う指導者も、広い意味でのコーチと言えるかもしれません。

けれども、「教えるコーチ」と「引き出すコーチ」は、同じ"コーチ"という名前で呼ばれながら、前提としている考え方が少し違います。

この記事では、スポーツのコーチとコーチングのコーチ、それぞれの特徴と共通点をたどりながら、日常のコミュニケーションにも生かせる"関わり方のヒント"をお伝えしていきます。

スポーツのコーチは「教える」プロフェッショナル

まずは、私たちにいちばん馴染みのある、スポーツのコーチから見てみましょう。

スポーツのコーチの役割は、とてもシンプルです。
選手を強くし、結果を出せるように導くこと。

そのためにコーチは、フォームや技術を細かくチェックし、必要なトレーニングを考え、戦術や作戦を伝えます。

練習や試合の様子から課題を見つけ、「ここはこうするといいよ」「次はこのパターンを試してみよう」と、外側から具体的な方法を教えていきます。
スポーツの世界では、「正しいやり方」や「より効果的な方法」が、ある程度はっきりしている場面が多くあります。

だからこそ、経験と知識を備えたコーチが「教えること」は、とても大きな意味を持ちます。

スポーツのコーチは、まさに「教えるプロフェッショナル」
自分の知恵を惜しみなく伝えることで、選手の力を引き上げていく存在です。

コーチングのコーチは「引き出す」伴走者

一方、コーチングのコーチは、少し違うスタンスで人と向き合います。

コーチングの前提には、「答えはその人自身の中にある」という考え方があります。

たとえば、こんな相談があったとします。
「今の会社にこのままいるべきか、転職した方がいいのか、迷っています」

もしここで"教えるモード"に入ると、「今の業界は将来性がありますよ」「転職するなら今がチャンスですよ」といったアドバイスをしたくなるかもしれません。

けれどもコーチングのコーチは、すぐに「〜した方がいい」とは言いません。

代わりに、こんな質問を重ねていきます。
・今の仕事の、どんなところにやりがいを感じているのか。
・日々の働き方の中で、どこに違和感や疲れを覚えているのか。
・数年後の自分を思い浮かべたとき、どんな姿でいられたら納得できそうか。

こうした問いかけと、丁寧に耳を傾ける時間を通じて、その人の大切にしたい価値観や、本音の気持ち、心の奥にあった願いが少しずつ言葉になっていきます。

コーチは、正解を提示してくれる"先生"ではありません。
クライアント自身が、「自分の答え」に気づけるように隣を歩き、小さな一歩を踏み出せるよう支えていく「伴走者」です。

スポーツのコーチが「教えるプロ」だとしたら、 コーチングのコーチは「引き出すプロ」と言えるかもしれません。

それでも、どちらも「コーチ」と呼ばれる理由

ここまで読んで、「こんなに違うのに、なぜ同じ"コーチ"と呼ぶのだろう」と感じた方もいるかもしれません。

そのヒントになるのが、「coach」という言葉の成り立ちです。
もともと coach とは、"人を目的地まで運ぶ馬車"を指していたと言われています。
今いる場所と、行きたい場所をつなぐ存在。

そこから、人を望む状態に導く家庭教師を「コーチ」と呼ぶようになり、スポーツの世界に広がり、現代のコーチングにも受け継がれていきました。
スポーツのコーチも、コーチングのコーチも、「どんな関わり方をしているか」は違います。

それでも共通しているのは、目の前の人が望む未来へ進むのを支える存在である、ということ。

形は変わっても、「コーチ」という名前が変わらず使われている背景には、そんな共通の役割があるのだと思います。

日常に生きる「教える」と「引き出す」の視点

実は、この「教える」と「引き出す」の違いは、特別な場面だけの話ではありません。

私たちの日常のコミュニケーションにも、そのまま関わっています。
たとえば、
・部下が仕事の進め方に迷っているとき。
・子どもが進路について悩んでいるとき。
・パートナーが、仕事や将来について不安を話しているとき。

つい、「こうした方がいいよ」「それはやめておいた方がいいんじゃない?」と、自分の考える"正解"を伝えたくなることはないでしょうか。

もちろん、それが役に立つこともあります。

正しいやり方を知らないときには、「教える」ことが必要です。

一方で、「この人自身は本当はどうしたいのだろう」「何を大事にしたいと思っているのだろう」と、一呼吸おいて"引き出すモード"に切り替えてみると、会話の空気がふっと変わることがあります。

「あなたはどうしたいと思っている?」
「もし自由に選べるとしたら、どうしたい?」

そんな問いかけをしてみるだけでも、相手の中に眠っていた考えや気持ちが出てくることがあります。

教えることと、引き出すこと。

どちらが良い・悪いではなく、その2つを状況に合わせてやわらかく使い分けられるようになると、 部下や子ども、家族との関係が少しずつ変わっていきます。

コーチングの学びは、こうした日常のコミュニケーションに、そっと新しい選択肢を増やしてくれるものでもあります。

おわりに──コーチングの空気感を、少しだけ味わってみませんか

スポーツのコーチと、コーチングのコーチ。

スタイルは違っても、どちらも「人が自分らしく前に進むこと」を支えている、という点では同じです。

そして、コーチングの考え方や関わり方は、
・ 部下や後輩とのコミュニケーション
・子育てや家族との対話
・自分自身のキャリアや生き方を見つめ直す時間
など、日常のさまざまな場面で生かすことができます。

ここまでお読みくださった方の中には、「コーチングの関わり方って、どんな感じなんだろう」「実際に自分が話を聴いてもらったら、どんな気持ちになるのかな」と、少し興味がわいてきた方もいらっしゃるかもしれません。

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