「うまくいく1on1」と「惜しい1on1」の違い-"話して終わり"から一歩先へ

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ここ数年、企業の中で「1on1面談」「1on1ミーティング」という言葉を耳にする機会が増えました。

制度としてはすっかり定着してきた一方で、現場の声に耳を傾けてみると、

「時間は取っているけれど、雑談の延長になってしまう気がする」
「どこまで本音を聞けているのか、自信が持てない」
「やりがいは感じるけれど、少し負担にもなっている」

そんな、少し複雑な思いも聞こえてきます。

せっかく時間をかけて行う1on1だからこそ、「話して終わり」ではなく、相手にとっても自分にとっても意味のある時間にしていきたい――。

そのヒントのひとつが、「コーチング」という考え方や関わり方を取り入れてみることです。

この記事では、企業の現場で「1on1面談×コーチング」を実践している3名の銀座コーチングスクール(GCS)認定コーチの体験と、座談会でのやりとりをご紹介します。

ご自身の1on1をそっと振り返る、ささやかなきっかけになれば幸いです。

現場で1on1を続けてきた、3人のコーチたち

※お時間のある方は、動画もご視聴いただけます。


最初にご紹介するのは、電機メーカーで営業職として長年活躍されている田村聖コーチです。

会社全体で組織開発に取り組み始めたタイミングでGCSのコーチングを学び、その流れのなかで社内の1on1面談を推進する役割を担うようになりました。
今では、毎月およそ50名もの社員と1on1の時間を持っているそうです。

「状況報告の時間」で終わらせるのではなく、「その人自身がどうしたいのか」「ここから先をどうしていきたいのか」に一緒に目を向けられるよう、問いかけや聴き方を一回一回工夫していると話してくださいました。
同じ30分でも、関わり方ひとつで、相手の表情や言葉ががらりと変わっていくことを実感されているそうです。


二人目は、外資系アウトドアアパレル企業でストアマネージャーを務めてこられた田部井茉里コーチです。

店舗の現場でスタッフと向き合うなかで、同じような課題が何度も繰り返されたり、「伝えているつもりなのに、なかなか変化につながらない」と感じる場面が多かったと振り返ります。
そのモヤモヤをきっかけにコーチングを学び始め、1on1の中で「答えを与える」対話から「一緒に考える」対話へと、少しずつスタイルを変えていったそうです。

スタッフ一人ひとりの「本当はどうしたいのか」「どんな店にしていきたいのか」といった思いが、本人の言葉として出てくるようになると、行動や雰囲気も少しずつ変化していきます。
その積み重ねが、自律的に動けるチームづくりにつながっているのだと、穏やかな口調で語ってくださいました。


三人目は、メーカー系商社で新規事業立ち上げ組織の運営に携わる田中剛コーチです。

ちょうど組織が動き始めたタイミングでコロナ禍となり、働き方は一気にオンライン中心に。
メンバーの様子が以前よりも見えづらくなり、「このままで本当に大丈夫なのだろうか」という不安から、1on1面談を本格的に始められたそうです。

ところが、最初のころの1on1は、思うような手応えがなかったといいます。
上司側が一生懸命話しすぎてしまったり、画面越しだと距離感がつかみにくかったり...。

そこでGCSでコーチングを学び、オンラインでも信頼関係を育む聴き方や、メンバーの主体性を引き出す質問の投げかけ方を取り入れていかれました。
今では、マネージャー層へのコーチングやメンタリングも行いながら、組織全体の対話を支える存在になっています。

座談会で見えてきた、「うまくいく1on1」と「惜しい1on1」の違い

3名のコーチにお集まりいただいた座談会「1on1面談 × コーチング」では、現場ならではのエピソードが次々と飛び出しました。

印象的だったのは、1on1を始めたばかりの頃に、誰もが一度はつまずくポイントの話です。
・沈黙が気になって、つい上司側が話しすぎてしまうこと。
・部下のためを思ってアドバイスを重ねた結果、気づけば「上司がたくさん話す時間」になってしまうこと。
一生懸命だからこそ陥りやすいパターンに、3人がそろってうなずいていたのが印象的でした。

そこから話題は、「コーチング」と「1on1面談」の共通点や違いへと広がっていきます。

制度としての1on1は会社が用意してくれるものですが、その時間の中身をどのようにつくるのかは、1対1で向き合う二人に委ねられています。

コーチングのスタンスや問いかけを参考にしながら、「今日はどんな時間にしたいのか」「この1on1が終わるとき、どんな状態になっていたいのか」といった共通のゴールを、最初に軽く言葉にしてみる。
それだけでも、場の空気や対話の方向性が少し変わってくる、という話も印象に残りました。

さらに、「相手を信じて任せるとはどういうことか」という、少し踏み込んだテーマにも話が及びました。

「信じて任せる」と一口に言っても、ただ何も言わずに見守ればいいわけではありません。
あえて口を出さずに待ったほうがいい場面もあれば、問いかけを通して相手の視点を広げたほうがいい場面もあります。

その見極めをどのようにしているのか──3人それぞれの感覚や工夫が語られていく時間は、聞いているこちらも思わず自分自身の関わり方を振り返ってしまう、深いひとときでした。

「場」を整えるだけでは届かないところに、コーチングが届いていく

1on1面談の枠組みを整えることは、とても大事です。

定期的な時間を確保し、落ち着いて話せる場所を用意し、目的やルールを決める。
そうした「場づくり」があるからこそ、安心して対話が生まれます。

ただ、それだけではどうしても届きにくい領域があります。

たとえば、「この上司は、自分の話をちゃんと受け止めてくれるだろうか」という感覚。
あるいは、「ここで話すことは、自分にとってどんな意味があるのだろう」という納得感。

こうした"目に見えない部分"にそっと働きかけるのが、コーチングのスタンスや関わり方なのだと思います。
・どんな前提で相手と向き合うのか。
・どのタイミングで、どんな問いを差し出すのか。
・相手が自分自身の答えに近づいていくプロセスを、どの距離感で見守るのか。
1on1は、毎回が「ライブ」です。

台本通りには進まないからこそ、その場その場で相手にあわせて問いや関わり方を微調整していく柔らかさが求められます。

そのときに、場当たり的ではない「考え方の土台」として支えてくれるのが、コーチングとして体系化された知恵なのだと感じます。

もう少し、じっくり味わってみたいと感じた方へ

ここまで読んでくださったり、座談会動画をご覧になったりするなかで、「自分の1on1にも、こうした視点を少し取り入れてみたいな」「聴き方や問いかけ方を、感覚だけでなく、もう少しちゃんと学んでみたい」 そんなふうに感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

銀座コーチングスクールでは、コーチングの雰囲気や学び方を実際に体感していただけるコーチング無料体験講座を開催しています。

コーチングの基本的な考え方や、1on1に取り入れやすい聴き方・問いかけ方のポイントにも、短い時間の中で触れていただけます。

もし、「文章で読むだけでなく、自分でも少し味わってみたい」と思われたら、タイミングの合う回をそっとのぞいてみてください。

1on1のあり方を見つめ直したくなったときの、ひとつの選択肢として、 心の片隅に、そっと置いておいていただけたら嬉しく思います。

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