自己肯定感・自尊心・自信の違いとは?コーチの視点から見える「三つのチカラ」

「自己肯定感を高めたい」「もっと自信を持てたらいいのに」
そんな言葉を、ここ数年でよく耳にするようになりました。
一方で、自己肯定感・自尊心・自信という似た言葉の違いが、はっきりとは分からないまま、何となく使っている方も多いのではないでしょうか。
コーチングの現場では、この三つをどう理解し、クライアントとの対話の中でどう扱うかが、その人らしい変化を支えるうえで大切なポイントになります。
このコラムでは、コーチの視点から三つの違いとつながりをやわらかくひもときながら、ご自身や身近な人とのコミュニケーションにも活かせるヒントをお届けします。
自己肯定感――「どんな自分もここにいていい」という土台
自己肯定感は、一言でいえば「ありのままの自分を認めてあげる力」です。
うまくいった日も、うまくいかなかった日も、結果や評価とは切り離して「それでも自分には価値がある」と感じていられる。
そんな心の土台のような存在だとイメージしてみてください。
たとえば、仕事でミスをしてしまったとき。
「だから私はダメなんだ」と、自分の存在そのものを否定してしまうのか、「今回はうまくいかなかったな。次はどうしようかな」と、できごとと自分を切り分けて考えられるのか。
この違いには、自己肯定感の状態が大きく影響しています。
コーチは、クライアントの言葉や感情をジャッジせず、まずはそのまま受け止めることを大切にしています。
「そんなふうに感じていたんですね」「そう思った自分がいたんですね」と、良い・悪いをつけずに認めていくこと。
同時に、「できたかどうか」だけに注目するのではなく、「やろうとしたこと」「途中で気づけたこと」といったプロセスにも光を当てていきます。
そうした関わりが積み重なることで、「どんな自分でもここにいていい」という感覚が、静かに少しずつ育っていきます。
自尊心―「自分をどう扱うか」という軸
自尊心は、「自分を大切にしようとする姿勢」に関わるものです。
周囲の基準や世間の"正解"だけに振り回されず、自分の価値観や大事にしたいものを知り、それに沿って選択しようとする。
そんな"自分軸"のような役割を持っています。
本当は休みたいのに、「断ったら悪く思われるかも」と、いつも周りを優先してしまう。
気づけば、自分の時間やエネルギーをすり減らしている。
そんな状態が続いているとき、自尊心は少し苦しくなっているのかもしれません。
コーチとの対話の中では、「あなたにとって、本当に大事にしたいことは何でしょう?」「その選択は、どんな価値観から来ていると思いますか?」といった問いがよく交わされます。
正しい答えを探すためというよりも、クライアント自身が「自分の言葉で自分を語る」ことをお手伝いする問いです。
自分の価値観が言葉になってくると、「自分を大切にしてもいい」「自分を大切にする選択をしていい」という感覚が、少しずつ"自分のもの"になっていきます。
それが、自尊心という軸を支える力になっていきます。
自信―行動をそっと押し出してくれるエンジン
自信というと、「ある」「ない」と白黒で語られがちですが、本来はもっとグラデーションのある感覚です。
「完璧にできるかどうかは分からないけれど、やってみようかな」「一度うまくいかなかったけれど、工夫すれば次は変えられるかもしれない」
そんな小さな前向きさや、「何とかなるかもしれない」という見通しも、自信の一部と言えるでしょう。
自信は、生まれつき決まっているものではなく、過去の経験の積み重ねから育っていきます。
うまくいった経験だけでなく、「うまくいかなかったけれど、そこから学んで次に活かせた」というプロセスも、確かな自信の種になります。
コーチングでは、クライアントと一緒に「少し頑張れば届きそうな目標」を見つけ、そのための小さなステップを描いていきます。
そして行動したあと、「何がうまくいったのか」「どんな工夫をしたのか」「どんな自分に気づいたのか」を丁寧に振り返っていきます。
こうしたサイクルが回り始めると、「自分にもできることがある」「何かあっても、工夫しながら進んでいける」という感覚が、少しずつ体の中にたまっていきます。
それが、行動をそっと押し出してくれるエンジンとしての自信になっていきます。
三つの違いと、ゆるやかなつながり
改めて眺めてみると、自己肯定感・自尊心・自信は、別々のもののようでいて、ゆるやかにつながり合っています。
自己肯定感は「どんな自分でもここにいていい」と感じられる土台。
自尊心は「自分をどう扱うか」という軸。
自信は「行動してみよう」と背中を押してくれるエンジン。
どれか一つだけを高めればよい、というよりも、それぞれが影響し合いながら、その人らしい在り方を支えています。
たとえば、自信はあるように見えても、失敗した瞬間に自分を激しく責めてしまう場合は、自己肯定感の土台に目を向けてみるとヒントが見つかるかもしれません。
周囲の期待には応えられるのに、「本当はどうしたいのか」が分からなくなっているときには、自尊心という軸に光を当ててみることが助けになることもあります。
コーチは、クライアントの言葉や表情、その背景にある思いを聴きながら、三つのどこに焦点を当てると、その方の前進をやさしく支えられそうかを見立てていきます。
日常のコミュニケーションにできる、小さな工夫
ここまでの話を、少しだけ身近な場面に重ねてみましょう。
失敗して落ち込んでいる人に、どんな言葉をかけていますか。
「どうしてそんなこともできないの」と責めてしまうのか、「そんなこともあるよね」と、存在そのものを受け止める言葉をかけるのか。
自分をすり減らしながら頑張っている人に対して、「もっと頑張って」と背中を押すのか、「あなた自身はどうしたい?」と、本音を大切にするきっかけを渡すのか。
同じ場面でも、かける言葉によって、相手の自己肯定感・自尊心・自信のどこに働きかけているのかが変わってきます。
「正しい答えはこれ」と決める必要はありません。
ただ、相手の話を聴きながら、「いまこの人にとって支えになりそうなのはどこだろう」と、一瞬意識を向けてみる。
その小さな意識の変化が、コミュニケーションの質を少しずつ変えていきます。
そして、それは同時に、「自分自身とどう対話するか」を見つめ直すきっかけにもなっていきます。
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ここまでお読みいただき、「頭では分かったけれど、実際の会話の中でどう生かしたらいいのかな」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
自己肯定感・自尊心・自信の三つは、文章で理解することも大切ですが、 実際に「聴いてもらう」「問いかけられる」「自分のことを話してみる」という体験を通してこそ、ふっと腑に落ちてくる部分がたくさんあります。
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今回のコラムが、ご自身や大切な人との関わり方を見直す、静かなきっかけになりましたらうれしく思います。
そしていつかどこかのクラスで、実際にお会いできる日を楽しみにしています。