大谷翔平『憧れるのをやめましょう』に学ぶ:憧れ・夢・目標とコーチング

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WBC(World Baseball Classic)で大谷翔平選手がチームメイトに伝えた「憧れるのをやめましょう」という言葉を、覚えている方も多いのではないでしょうか。

多くの人の心を揺さぶったこのひと言は、コーチングの世界で大切にしている「憧れ」「夢」「目標」という三つの言葉を、あらためて見つめ直すきっかけにもなります。

この記事では、それぞれの違いとつながり、そしてコーチングがどのようにその橋渡しをしてくれるのかを、コラムのようなやわらかい形でお話ししていきます。

「憧れ」─心がふっと動く瞬間

最初に、「憧れ」について考えてみましょう。

憧れとは、誰かの生き方や在り方を見たときに、「素敵だな」「ああなれたらいいな」と心がふっと動く感情です。
頭で理屈を並べる前に、胸の奥が少し熱くなったり、ワクワクしたりする、あの感覚です。

テレビに映るスポーツ選手に勇気をもらったり、本で知った経営者のストーリーに「こんな働き方ができたら」と心惹かれたり、職場の上司や先輩を見て、「自分もあんなふうに仕事ができたら」と感じることもあるでしょう。

この憧れは、私たちを前に進ませてくれる大切なエネルギーです。

ただ、そのままにしておくと、「すごい人を眺めているだけ」で終わってしまうこともありますし、「あの人は特別、自分とは違う世界の人」と、いつの間にか線を引いてしまうこともあります。

コーチングの場では、この「憧れ」を丁寧に扱います。

どんなところに一番心が動いたのか。その人のどの部分を自分の中にも取り入れてみたいのか。もしそれが叶ったら、どんな自分でいたいのか。

そんな問いを重ねていくうちに、憧れは単なる感情ではなく、「自分らしさ」を映し出す鏡に変わっていきます。

「夢」─少し先の未来を照らすもの

次に、「夢」についてです。

夢とは、「いつかこうなっていたい」という将来のビジョンや希望のこと。

時間で言えば中長期のスパンで、自分の人生の方向性をゆるやかに指し示してくれる存在です。

「いつか自分のビジネスを立ち上げたい」
「世界中を旅しながら働いてみたい」
「人の成長を支える仕事で、多くの人の役に立ちたい」

そんなふうに思い浮かべる未来が、あなたにとっての「夢」かもしれません。

夢を描くときに大切なのは、「現実的かどうか」をいったん脇に置いてみることです。

「もし何の制限もないとしたら、どうなっていたいだろう?」と、自分の心にやさしく問いかけてみる。少し大胆なくらいのイメージから始めてかまいません。

コーチングでは、頭の片隅にぼんやりと存在していた夢を、言葉にしていくお手伝いをします。

夢が叶った一日を想像してみたり、どんな人たちと一緒にいて、どんな会話をしているのかをイメージしてみたり。

そうやって輪郭がはっきりしてくると、「なぜそれを叶えたいのか」という内側からの動機も、自然と浮かび上がってきます。

「目標」─日常の行動にまで落とし込んだゴール

そして、「目標」です。

目標は、憧れや夢と比べると、とても現実的な存在です。

「いつまでに」「何を」「どのくらい」といった形で、具体的に言葉にされたゴールのことを指します。
たとえば、来年の○月までに5キロ減量する、次の資格試験で90点以上をめざす、3ヶ月間、毎週1回オンライン勉強会を開いてみる。

こうした目標は、達成したかどうかが分かりやすく、振り返りもしやすいのが特徴です。

コーチングでは、「その夢に少しでも近づくとしたら、どんな目標を置いてみるのがよさそうでしょう?」といった問いを通して、夢と現実の間に橋をかけていきます。

そして、その目標をさらに小さなステップに分け、「今週できそうな一歩」「今日の自分にもできる一歩」にまで落とし込んでいきます。

高すぎる目標は、かえって心を疲れさせてしまうことがあります。
コーチは、クライアントの状況やペースを一緒に確認しながら、「がんばれば手が届きそう」な目標の大きさを探っていきます。

うまくいかないときも含めて経過を振り返り、必要であれば目標ややり方を調整していく。

その意味でコーチは、横を並んで歩いてくれる伴走者のような存在です。

三つはどうつながっているのか

「憧れ」「夢」「目標」。
こうして見てみると、それぞれ役割も性質も少しずつ違っています。

けれど、実際の私たちの人生の中では、この三つは一本の線でつながっています。
誰かや何かへの憧れが、小さな火種のように胸の中に灯る。

その火種を頼りに、「自分もこんなふうになれたら」と未来の姿を思い描く。
それが夢になります。

そして、その夢に近づくために、日々の行動レベルにまで落とし込んだものが、目標です。

コーチングは、この三つの間に橋をかけていくプロセスそのものだと言えるかもしれません。

憧れを大事に味わいながら、その奥にある自分の価値観を言葉にしていく。

その価値観を土台に、ありたい未来の姿をじっくり描いてみる。

描いた夢と今の自分との間にある距離を確認し、そこを一歩ずつ埋めていくための目標と行動を一緒に考えていく。

そうした対話を重ねることで、「ただ憧れているだけの自分」から、「自分の足で未来をつくっていく自分」へと、少しずつシフトしていくのです。

「憧れるのをやめましょう」に込められたメッセージ

あらためて、大谷翔平選手の「憧れるのをやめましょう」という言葉を思い出してみます。

これは決して、「憧れなんて持たなくていい」という意味ではなかったはずです。
相手を特別視して見上げてしまうと、そこには見えない壁ができてしまいます。

その壁をそっと取り払い、「同じフィールドに立つ存在として、勝ちにいこう」と呼びかけた言葉だったのではないか、と私は感じています。

コーチングもまた、同じような姿勢を大切にしています。

「あの人は特別」「自分には無理」と線を引いてしまうのではなく、憧れの中にある自分の価値観や願いに目を向けてみる。

そして、自分なりの夢や目標へとつなげていく。理想と現実の間にある距離をごまかさずに眺めながら、「では、今の自分にできる一歩は何だろう?」と問いかけていく。

その一連のプロセスを支え、そっと背中を押してくれるのが、コーチングという対話の場なのだと思います。

「まずは雰囲気を味わってみたい」という方へ

ここまでお読みいただいたなかで、
「そういえば、自分にもずっと憧れている人がいる」
「頭の中には夢があるのに、うまく言葉にできていない」
「目標は立てるけれど、途中であいまいになってしまうことが多い」

そんなふうに感じた方も、いらっしゃるかもしれません。

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