コラム「小学生の時にイメージした将来の自分像通りになったイチロー選手」

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 好きなことをしながら物心ともに豊かな生活を送ることは、人の根源的な願望ではないでしょうか。

 子どもの頃からそれを選択し、大人になって仕事として確立している人もいれば、自分に合うことが見つからずに模索し続ける人もいます。

 イチロー選手のように、将来は一流の野球選手になると決めて、そのためにすべきことが、幼少時から決まっている人と中高年になっても探している人がいますが、早い方がよい訳ではなく、見つかるタイミングは人それぞれです。

 今ではすっかり有名になった、小学6年生の時に書いたイチローの作文には、3歳の頃から野球の練習をし、3年生からは1年のうち360日を練習時間にあて、しかも入団したい球団名まではっきりとしていたとあります。

 とても具体的です。彼に天性の才能があるからとも言えますが、それを活かすために、自分の内面にある純粋な意欲に素直に従ったのです。

 これは、野球をする他の理由を考えたり他人の思惑を気にしたりしないで彼自身の心の底にあった「純粋なやりたい気持ち」だけを見ていたからではないでしょうか。

 好きとか嫌いとか、練習がつらいとかいうレベルを越えた強い意欲があるから、自分の将来像が具体的にイメージできたのではないでしょうか。

 コーチングにもゴールを達成するためのプロセスでは「具体的に何をするか」を決めるという箇所があります。具体的なイメージを描けると実現する可能性も高くなります。

 さらに、野球以外にも、子どもの頃に母親が手づくりしてくれる洋服がうれしくて、自分も創ることに興味を持ち、プロのファッションデザイナーになった方や、普通の主婦だったけれど、ご主人の来客時にふるまうお料理が好評で、口づてに広まって、本を出すことになりやがて人気料理家になった方などもいらっしゃいます。

 この3人に共通しているのは2点。

 一つは、「自分が好きなこと」をまっすぐに受け止めて実行したこと。ただしこれは、「好き」と意識してというより身体と心が自然にそれをしていたと言えます。好き嫌いを考える前にやってしまう。やると自然にできてしまう。当人は、人より頭一つ飛び出てできていることにさえ気づかないということもある、まさにリソースです。

 もうひとつは、「それを最大限一生懸命に続けること」です。デザイナーさんは、海外で絹糸を探し、織り手を探し、染める人を選び究極を目指して服を作ることをしています。

 料理家の方は、アップルパイを作る際に、何種類ものリンゴを用意してどれが一番アップルパイに適しているかを何度も何度も試作を重ねてやり直し、最期には最高のアップルパイを作ったそうです。妥協を許さない、「一流の仕事人」の仕事です。

 しかし、イチローも、デザイナーさんも料理家の先生も、小学生時代や主婦の時に、「これを職業にして収入を得る」「成功して年収いくらを目指す」などとは、まったく頭になかったでしょう。

 「ただそれをするとできる。どんどん進む」、そして「それをしていると幸せ」だと感じるのでベストを尽くして一生懸命にやり続けるのです。

 長い時間を費やしても苦にはならないので自然にたくさんの機会に恵まれ、さらにたくさんの経験を積み、やればやるほど技術もマインドも成長していきます。

 同時に支持する人が増えて当然収入も増えていきます。

 この話を聞いて、「そういう人たちは、もともと才能があったから。でも自分にはないから」と思ったり、「自分にはそういうふうにできることが見つからない」と思ったりしたらそれは固定観念かもしれません。

 「どんどんできてしまうこと」は「得意なこと」として天から授けられた力のように思えます。これは、誰もが持っている固有の力ですが最初からできることなので自分では見つけにくいのかもしれません。

 しかし、何をするにしても「自分は本当はどうしたいのか」を明確にしておくことは最も重要な最優先事項です。 ー 第1回 おわり ー


◇ 山上 晴美
2009年よりコーチとして活動。コーチングを学んで「自分を探求する面白さ」に気づく。自分を知り、心の仕組みを知ると、人間関係も変わってきます。終わりのない旅のように続く自己探求を続けながら、現在、自然派生活、宇宙を味方に付ける方法、生と死などを勉強中です。GCS認定講師 / 元 GCS東京本校・東神田クラス 講師

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(このコラムは、「GCS認定コーチ向けニュースレター」(2017/7/5)に掲載されたものです。)