Coach Interview -高野慎吾 コーチ（前編）

　長く勤めた会社を62歳で退職し、フリーランスのコーチとして活動している高野さん。ものの見方が大きく変わり、異なる分野であってもこれまでの経験は十分活かせると確信したそうです。 （聞き手：山上 晴美コーチ）

−高野さんとは東神田校（現在は閉校）で講師としてご一緒させていただきました。もう10年近く前のことですね。60歳でコーチングと出会い、会社を退職し、現在に至るまでコーチとして活動されています。今、自分のセカンドステージをどんなふうに生きようかと考えている方に、高野さんの体験が参考になったらと思います。 まず、今現在、どんな活動をされていますか。

　２つのことをしています。一つは企業研修の講師。リーダーシップが必要な方、職場やセールスで成果を出したい方々に、リーダーシップの発揮の仕方、人の育て方、そしてビジネスコミュニケーションなどを研修しています。もう一つは個人のお客様向けに「幸せな成功を手に入れる」セッションをしています。
　例えば、お金はあるけれど離婚したとか、仕事はうまくいっているけれど孤独だとか。そういう、心にどこかアンバランスなものを抱えていて、成功はしているけれど幸せを感じられない。さらには幸せを実感できる夢や目標を人生でどうもったらいいか分からない。そういう人に向けて「幸せな成功者」になるための人生の創り方をコーチングを通して伝えています。

−「幸せな成功者」ですか。 では、高野さんがコーチングを勉強しようと思ったのはどんな理由からですか？

　それは、会社人生で初めて昇進昇格が止まった時、58歳で自分の全てが否定されたように感じた時です。それまではサラリーマンとして順調に昇格を重ねて成果を出してきたので、生意気ですが会社のトップに行けるだろうと思っていました。ですが、本社の役員ではなく子会社の取締役になったのです。それがとてもショックで勤めてきた38年間を否定されたような気がしたのです。自己否定ばかりになってしまった時、たまたまコーチングを知っている先輩がいて「高野のコミュニケーション力ならきっとコーチングの役にたつ」と言われてGCSを紹介されたのがきっかけです。

−そうですか。それで体験講座を受けて？

　体験講座は受けないでそのままクラスAに行きました。
　もう人生の目的がなくなってしまったので何をやっていいかわからなくて。とりあえずやってみようという気持ちでした。
　これからのやりがいとか生きがいとかを見つけて、自己肯定感を高め、会社を離れてもやっていけるような何かを探してですね。今まで会社が用意してくれていたゴールがもうなくなったので自分で将来のゴールを見つけないといけないと思いました。とにかく何か夢中になれるものが欲しいと思って。あとは、ずっと落ち込んでいても仕方ないのでなんとかしないとという想いからですね。それまでは自信満々でしたから。人生初の挫折です。

−そうでしたか。大きな挫折だったのですね。初めてのコーチングの学びはどんな感じでしたか？

　最初は、頭で理解はできましたが使えるかはさておきという感じでした。でもクラスCで発想の転換というか気づきを促されて、それがとてもインパクトが強くて人生を変えるきっかけになりました。例えば今までは、問題があったり何か起きたりした時に相手のせいにしていました。こんな環境だからダメなんだとか、職場がこんな雰囲気だから、上司がバカだから、部下がやる気がないからとか。要は自分が常に正しくて課題や問題は周りにあるという視点で捉えることが多かったのです。
　でもコーチングと出会って、自分に課題があるとしたらなんだろうとか、前に進むのにブレーキになっているものはなんだろうとか、恐れていることとか、自分の中に焦点を当てて自分が変化することで導き出すということを知ったことが本当に目から鱗でした。

　自分のものの見方が変われば人生が変わる。コミュニケーションが変われば人との関係も変わる、そこが人生の基本です。それをちゃんとわかっていれば前に進めるし後悔も少なくなる。58歳で初めて気づきました。それが忘れられないです。

−それで、会社を離れても将来のご自分を描くことができるようになったのですか。

　はい。ついてないとか運がないとか、何に対しても悲観的に見ないこと。それまで、会社が評価しないからと批判的でした。サラリーマンだからしょうがないなとか傍観者的になったりしていました。でももっと新しい幸せがあるかもしれない。人生これから40年も残っているんだから。自分はサラリーマンが全てだと思っていたけれど、サラリーマンじゃない人は何を幸せに生きるんだろうって。どういうふうに生きたら幅広い生き方ができるんだろう。起きた出来事は批判的にも楽観的にも主体的にも捉えることができる。ものの見方を変えることで人生の景色がガラッと変わるということに気づいたのです。
　そのことを多くの人に知ってほしいし、そういう人を増やしたいというのがやりたいビジネスの原点になりましたね。