Coach Interview - 神谷 香 コーチ（後編）

　コーチングの他に臨床心理士と公認心理師として、カウンセリングをしている神谷さん。なぜ人はこうも苦しみを抱えるのかというその現象に関心を持ったことから、探究の旅が始まったそうです。
（聞き手：山上 晴美コーチ）

−会社員時代から人事系の仕事をしていたということですが、何か人への思いみたいなところからですか？

　人事の仕事の前は英語の先生になりたいと思っていて、対人支援的な人に関わることに関心があったんだと思います。自分でもいろいろな意味でうまく行かなさを感じていたし、同時に自分の中のことだけではなくて現象に興味があったんです。どうしてこういう精神疾患のようなことが起きるのかとか、どうして健康な状態から病に移っていくのだろうかとか、それがどうやって回復していくのだろうかと。そういうことに興味がありました。同じことがあってもそうなる人とならない人がいるのはどうしてだろう。不思議ですよね。これは一体何が起きているのだろう。病を抱えた人の中で人はどんな体験をしているのかそこに関心があります。それをどう支援してどう回復していくかみたいなところです。

−同じ職場環境でも受け止め方が全然違っていて、問題なく楽しいと感じる人もいれば、毎日苦痛でたまらないと言う人もいます。この大きな違いはなんだろうと思ったことがあります。

　そうなんです。それで会社を辞めてしまうとか残るとか、大きく道が分かれる。あと、人事の仕事をしていた時の会社が、本人の事情は加味しない、非常にドライなやり方で厳しいリストラをしていたことがあったんですね。その時にちょっと不幸なことがあって大騒ぎになってしまい、人事の仕事ってなんだろうって考えちゃったことがありました。 それから、派遣の営業マネージャー時代みんなから愚痴を聞いていたことが、今の仕事のタネだったのかと今になって思えます。あの時に体験したこと。普通に働いている人たちが、ドア１枚開けると大勢がこんなにグズグズと文句を言っているのかって。世の中のこんなにたくさんの人たちが、働き方とか人生のこととか、家族のこととかいろいろなことに悩んでいるのかってことを知った時に、これは一体なんなんだと、自分の人生の大テーマにそこで出会ったのだと思います。
　今私が関わっている方々も、多分その周辺にいらっしゃる方々で、言えるのは「大丈夫そうに見えるしんどい人たち」。こういう方々が私のお役目を果たす方々なんだと最近感じています。日常生活で表面上は家庭も仕事も普通にできているけれど、内情はすごく吹き荒れていたり苦しいものを抱えたりしている。無力感や人生に対して白けているというような。

−よくわかります。たくさんのものを手に入れていても満たされてないと感じている人の多さですね。今、世の中では不安を掻き立てられるようなことが起きていますが、皆さんにどうなってもらえたらうれしいですか？

　社会で起きていることは自分ではコントロールできないこともたくさんあるけれど、ぼちぼちやればいいのではないかと。ぼちぼちでいいって思えたらそれでいいです。不安なこととか嫌なことは起きると思うけど、起きても大丈夫、立ち直れるという心の筋力があればなんとか対処できる。そうなってほしいしそう思います。そんなふうに自分が自分の拠り所になれるのがカウンセリングです。

−まもなく新しい年になりますけど、次の年に向けて何か新しく考えていることなどはありますか？

　ちょうど1月で15年目になります。特に何かするわけでなく日頃のことを粛々とやっていくつもりだけど、これからさらにさっきの「大丈夫そうに見えるしんどい人たち」に関わっていくので、その研修も集中して受ける予定です。自分の中でもサービスが変わっていく予感があって面白くてノっているところです。 これまでの14年を踏まえその先に向かって、必要なことが見えてきてそこに手が伸ばせている状態。発信もきちんとしていきたいと思います。

−そうなんですね。予感を感じて必要なことが見えてきて、今そこに手が届く状態というのはとてもいいですね。もう実現が約束されているようなものです。久しぶりにお話をうかがえてよかったです。ありがとうございました。