結局、「コーチング」って何?
パフォーマンスを向上させたいと思うのはスポーツ選手に限られたことではありません。経営者や管理者をはじめとして、ビジネスに携わるあらゆる人々にそのニーズがあります。コーチングは、経営者や社員のパフォーマンス向上のために極めて有効だと認識されてきているのです。
結局、「コーチング」って何?
コーチあるいはコーチングという言葉を聞くと、たいていの人はスポーツ選手のコーチを思い浮かべることでしょう。そのようなコーチの使命は、選手のパフォーマンス(成果、業績)を最大限に向上させることです。
しかし、パフォーマンスを向上させたいと思うのはスポーツ選手に限られたことではありません。経営者や管理者をはじめとして、ビジネスに携わるあらゆる人々にそのニーズがあります。コーチングは、経営者や社員のパフォーマンス向上のために極めて有効だと認識されてきているのです。
コーチングは、「パフォーマンスを向上させるために対象者を勇気づけ、質問によって気付きを引き出し、本人の自発的行動を促進させるコミュニケーション技術」と定義されます。「指示・命令」ではなく「質問」が主となる点が、かつての社員に対する教育・指導のスタイルとは大きく異なります。
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「聴く」と「質問する」の二つのスキルを駆使して、対象者本人が持っている答えを引き出していくのです。それにより、上司への依存型部下ではなく、自立型部下の育成を図ることができるのです。「教える」「指示する」といった従来のマネジメントスタイルからは、大きなパラダイムの転換が求められるのです。
では、「聴く」「質問する」といったコーチングやそのスキルが今、なぜ注目されてきているのでしょうか。コーチングがコミュニケーションの技術だとすると、企業内でのコミュニケーションの問題点について考えてみる必要があります。
以前大ヒットした刑事モノ映画で、主人公の「事件は会議室で起こっているのではない!」というセリフが注目を浴びました。経営においてもその通りなのです。収益はまさに「現場」で発生するのであって、いくら会議に時間を費やしたとしても、「現場」とかけ離れた議論を重ねたところで空しいばかりです。
しかし現実はどうでしょうか。議論にもならず、社長の独演会といった様相を呈している会議にはよくお目にかかります。社長や一部会議参加者以外の発言が少ない場合、現場の実状を反映した会議になっているかと言えば、かなり疑問です。
社員からは、組織の風通しが悪い、社内のコミュニケーションがスムーズでない、といった声が聞かれます。そのような状況では、現場の生の情報が経営陣に伝わりません。不完全あるいは不正確な情報に基づいた意思決定では、会社の経営を誤るでしょう。
特に、悪い情報が上がって来ないという状況は組織にとって不健全で、激変する環境に対応出来ずに致命傷に至ることすらあるのです。
特に昨今は経営を取り巻く環境の変化が激しくなっています。市場の環境は、かつてとは一変しているのです。環境変化が緩やかな時代には、経営者や上司といった、過去の現場を知る者がその経験に基づいて指示・命令を下していても概ね正解でした。
しかし今は違います。「俺が若い頃は・・・」式の過去の成功体験に基づいた指導はもはや通用しません。現場情報の重要性は、過去とは比較にならないほど高まっているのです。指示・命令型のマネジメントであってももちろん、現場情報の収集は重要でした。
しかしそれは、「聴く」というより「訊く」=「尋問する」ことであったり、内容によっては報告者を評価する目的で行なわれることも多かったのです。報告をする側は、こんなことを報告しては叱られるのではないか、自分に対する評価が下がるのではないかという不安を抱えています。
保身のために、上司の顔色を窺いつつ報告をあいまいにしたり、極端な場合は虚偽の報告や重要な事実を隠匿したりすることもあり得るのです。
コーチングのコアスキルは「聴く」ことです。これは、通り一遍の報告を受けることとは異なります。現場で本当に何が起きているのか、評価や批判をすることなしに、まずは虚心坦懐に耳を傾けるのです。
コーチ役を務める経営者や上司は、部下をサポートする役に徹して、部下の話す言葉に共感し、100%部下の味方になります。そうなって初めて上司・部下の間に信頼関係が生まれるのです。そして、何でも話せる雰囲気が醸成されて、現場の正確な情報を引き出し共有することが可能となるのです。
あなたの企業では、会議など、社内でのコミュニケーションはどのように行なわれているでしょうか。もしあなたが経営者や管理職として会議の運営をしているのなら、次の会議では聞き役に徹し、会議参加メンバーが自由に本音で話せるよう、工夫してみることをお勧めします。
それがコーチングを身につける第一歩となります。