目標を設定する
コーチングセッションで扱う「目標」には、クライアントが長期的に実現を図りたい状態であることもあれば、極めて短期間で設定するものもあります。コーチングと目標設定とは、切っても切れない縁があるので、さまざまな場面で「目標」を話題にすることになるでしょう。
目標を設定する
コーチングは相手の目標達成をサポートする仕組みです。目標設定のないコーチングはあり得ません。目標を「ノルマ」ととらえるのではなく、その達成へのチャレンジは、胸の躍るすばらしい体験だと、ポジティブにとらえたいものです。
コーチングを活用する目的は、相手のパフォーマンスを高めていくことです。そしてそれは、行動することよって達成されます。とは言え、やみくもな行動ではパフォーマンス向上にはつながりません。前提として、目標を設定することが必要です。パフォーマンスが向上したかどうかは、すなわち、より高い目標を達成しているかどうかにより、測られます。
コーチングセッションで扱う「目標」には、クライアントが長期的に実現を図りたい状態であることもあれば、極めて短期間で設定するものもあります。例えば、30分間の予定でコーチングセッションを始める際、コーチはクライアントに「このセッションを終える30分後には、何が決まっていたら良いと思いますか?」といった質問をします。30分という、極めて短い時間スパンですが、これもまた「目標」です。コーチとクライアントがそれを共有することで、セッションは方向性を誤らずにスムーズに進みます。3カ月の期間でセッション契約をする際でも、3カ月後の状態を目標設定するのが一般的です。
クライアントが、何か実現したいテーマを持ってコーチとセッションを行なう場合は、目標設定が最初のうちの山場となるでしょう。「実現したいテーマ」そのものは、まだ目標として漠然としたものであることが多いものです。
そのような場合、コーチは、オープンクエスチョンやチャンクダウンといった質問のスキルをフルに活用し、目標を明確かつ具体的なものにしていきます。
例えばクライアントが、「もっと優秀な営業マンになりたい」というテーマを抱えてコーチを依頼したとします。コーチはまず、「優秀な営業マン」とはどのような人を指すのか、その定義を明確にする質問を投げかけるでしょう。
そして「優秀な営業マン」を構成する要素を明らかにし、優先順位をつけ、いつまでにどのような状態になりたいのか、できれば数値等の客観的なものさしで表現します。客観的なものさしで表現するのは、達成の度合いを把握しやすく、進捗の度合いや達成感をはっきりと時間できるからです。
また、コーチングでは、目標達成へ向けての意欲を喚起することも重要です。それが行動を促す原動力にもなります。そのために、五感を駆使して、目標を達成した時の体験を具体的に明確にイメージしていくような質問をします。
例えば、その目標を達成した時には「何が起きますか?」、「どのような光景が目に浮かびますか?」、「周囲からどんな反応があると思いますか?」、「どんな感覚がしていますか?」といった、視覚・聴覚・体感を通じて、未来の「成功体験」をイメージさせます。そうすることで、クライアントは目標をより身近なものと感じ、ぜひとも達成したいという意欲をもかき立てられます。
セッションによっては、目の前の問題を解決することがテーマとなるケースもあるでしょう。その場合、いきなり「どうするか?」という行動を求めると、セッションが堂々巡りになりがちです。大局観を欠き、小手先の解決策に走りがちとなるからです。
そのような場合も、まずは目標設定をすることが重要です。つまり、「どうなれば問題が解決したことになるのか」あるいは「問題のない理想的な状態とは、どのようなものか」を質問により明らかにします。また、先述のように、目標達成の具体的なイメージを明確にしていきます。
面白いもので、問題というネガティブなものに焦点を当てると、気持ちが暗くなり、前向きな取り組みができにくくなります。逆に、問題が解決した状態というポジティブなものに焦点を当てると、気持ちは前向きになります。気持ちが前向きになれば、問題を解決するためのアイデアも出やすくなります。
極端な話、同じアイデアであっても、気持ちが暗くなっていると、「そんなことをやっても無理だ」と思ってしまいがちですが、気持ちが明るければ、「それをやれば問題を解決できるかも知れない」という思いがしてくるものです。何事も「できる」と思わなければ、絶対に成し遂げることはできないでしょう。
「目標」はノルマではありません。モチベーションの源泉です。コーチングでは、それを相手から引き出し、そして成果を生む行動へとつなげましょう。あなたの部下と、「目標」についての対話をしてみましょう。ワクワクする気持ちがしてくるようなポジティブなイメージを描くことができれば、部下のパフォーマンスは向上するはずです。